『J-REITの内部留保解禁で、市場は活性化されるか』

MARKET INFORMATION

【国土交通省がリートの規制緩和を検討?】

  「国土交通省がリートの規制緩和の検討を始めた」との記事が、9月9日の週刊ダイヤモンドのオンライン版に掲載されました。その目玉は、J-REITに内部留保を認める制度変更です。今回の規制緩和報道の根拠となっているのは、馬淵澄夫国土交通副大臣が「J-REITの内部留保の仕組みを見直したい」との考えを明らかにしたことです。

   規制緩和の実施は、まだまだ流動的ではありますが、J-REITに内部留保について簡単に説明します。J-REITは、配当可能所得の90%超の利益配当を行うなどの要件を満たせば、投資家に対する配当を損金参入することができます。逆に言えば一定要件をクリアすることこそが、J-REITの命なのです。要件を満たさない場合は通常の法人税課税が行われるため、一般の不動産会社と同じになってしまうということです。これを避けるため、J-REIT各社はほぼ100%の配当を行ってきました。J-REITは言ってみれば、「宵越しの金は持たない」類の法人だったのです。

  ここに、「リーマンショック」と呼ばれる世界的な金融危機が襲いました。内部留保がないことがレンダーに不安感を与え、2008〜2009年にかけて資産規模の小さい「下位REIT」はリファイナンス(既存の借入金の借り換え等)が難しくなり、2008年10月にはニューシティ・レジデンス投資法人が、J-REITとして初めて民事再生法の適用を申請するに至りました。他のJ-REITでも借入金の返済のため物件の投売りや、リファイナンスコストの急上昇により分配金を大きく減らす事例が見られました。

  そのため、内部留保を認めれば、J-REITのファイナンス環境が好転し、ひいては低迷気味の不動産市場も活性化するのではないかと期待されているようですが、果たして「そううまく、問屋がおろす」ものでしょうか。

   内部留保があるに越したことはありませんが、先程説明しましたように配当可能所得の制限を緩和すれば、一般の不動産会社と変わらなくなってしまいますから、法人課税の原則とどう平仄を合わせるか難しい問題をはらみ、大幅な緩和が行われることは考えにくいのです。また、レンダーは「内部留保が少ない」ことをリファイナンス拒否の理由としていましたが、これは「下位REIT」だけがリファイナンスの危機に陥ったことと整合性が取れません。上位だろうが下位だろうが、J-REITに内部留保が難しいのは構造的に変わりないのですから。つまり、内部留保はレンダーの“後づけの言い訳”に過ぎないのです。

  では、レンダーがリファイナンスを拒否した基準は何でしょう。それは、物件のポートフォリオやキャッシュフローではなく、本来はJ-REITの評価とリンクしないはずのスポンサー、つまり、親会社・関連会社の顔ぶれです。大手不動産会社や生命保険会社等が名を連ねていれば金を貸す、独立系なら貸さないと、分かりやすい対応でした。スポンサーと物件を切り離してJ-REITを創り出したはずなのに、レンダーはスポンサーの血筋、家柄を重視したわけです。これは、従来のコーポレートファイナンスの延長に他なりません。

  現在は、金融庁の暗黙の指導のもと、下位REITが上位REITと合併し(実際には吸収合併ですが)、スポンサーの顔ぶれから独立系の、つまりレンダーがリファイナンスを渋るスポンサーが減っています。従って、内部留保に関係なく、レンダーはJ-REITに金を貸せるのです。それに付け加えるに、イザという時のために、レスキューファンド(不動産市場安定化ファンド)がセットされていることも、貸付のリスク軽減に寄与しているものと思われます。

 
以上

『J-REITの内部留保解禁で、市場は活性化されるか』